震災以降の省エネニーズや環境意識の高まりなどを背景に普及を加速させている「スマートハウス」。これは「HEMS (Home Energy Management System)」と呼ばれる一元管理システムで家電や住宅機器、太陽光発電システム、蓄電池などをつなぎ、家庭内のエネルギー消費を最適化するもので、多様な企業が装置やサービスの供給に向けて動き出しています。
本稿では、今後重要性を増すと考えられる「スマートハウス検証」について、複数回に分けて解説していきます。
急速に拡大する「スマートハウス」市場。現在は主に省エネニーズから需要を伸ばしていますが、今後はエネルギー関連だけでなく、ホームセキュリティや医療・福祉などさまざまな分野のサービスを取り込んでいくと思われます。
そのため関連産業のすそ野は非常に広く、多様な企業の参入が予想されますが、このことは品質管理におけるさまざまな課題を浮上させつつあります。
そのひとつが、複数メーカーのデバイスにおける「相互接続性」の確保です。
現状、HEMSのシステムの参入企業は大手メーカーが中心で、各メーカーがコントローラーやデバイスをトータルに提供しています。これは言い換えると、他メーカーのデバイスを接続した動作実績がないことを示します。
しかし今後は、大手が扱わないサービスを狙い、多くの中堅企業が参入してくることが予想されます。またスマートハウスの規格は戸建住宅に限らず、マンションやビル、さらには工場などにも普及が予想され、その場合は業務用製品も絡んでくると考えられます。
このように関連機器、サービスの複雑多様化が予想されるなか、まずはメーカー間の協力のもとで複数メーカーのデバイスを相互接続して動作させる実績を作る必要があります。
とはいえ、中堅~小規模メーカーが自前でこうした検証を行うのは非常に困難です。
次に、ネットワークの問題があります。通信規格の統一のため経済産業省は「ECHONET Lite」をHEMSにおける標準の通信プロトコルとして推奨しており、認証済み機器開発メーカーの数も増えています。
しかし、そこで規定されているのは、「OSI参照モデル」※の第5層~第7層のみ(下図)。下位層ネットワークのバリエーションにおいては動作保証、相互通信にまだ多くの問題があるのが現状です。
他方、一般社団法人情報通信技術委員会(TTC)は、下位層ネットワークの実装についてのガイドラインを策定していますが、これも接続性の検証はこれからという段階です。
※国際標準化機構(ISO)によって策定された、異機種間のデータ通信を実現するためのネットワーク構造モデル。
こうした状況下、IT検証の技術力向上および標準化に取り組む団体IVIA(一般社団法人 IT検証産業協会)は、「HEMS」サービスで実際に活用できる接続検証のガイドライン策定に向けて活動しています。
IVIAでは、前述の課題を含め、一例として、スマートハウスの接続検証観点を以下の7つのレイヤに整理しています。
本コラムでは次回以降、各レイヤの検証観点を解説していきます。
今後大きな拡大が予想されるHEMS市場。第三者検証専門会社であるヴェスは、HEMS関連サービスにおける品質確保についてノウハウの蓄積を進めており、貴社の課題解決に向けてサポートできる体制を整えています。自社で悩む前にまずお問い合わせください。